2018年7月17日に愛知県豊田市の小学生が学校から1キロ離れた公園で30分ほど虫捕りや遊具遊びをしたことにより熱中症となり教室内で休ますも悪化し死亡しました。
その教室(エアコンなしで天井に扇風機4台設置)では37度となっていたとのこと。
これを受け学校の教室等へのエアコン設置を要望する声が全国的に広まっています。
そんな中、赤穂民報の記事(水泳授業後に中学生7人救急搬送 熱中症の疑い)内のコメントでも議論されています。
以下、一部コメントです。
- 教室の室温が34℃以上になってる
- 昨日は教室の温度が37℃に達したようです
- 中学校では、冬のストーブをという話もありますが、おけるスペースがなくて危ないので冷暖房のエアコンを設置して下さい
- 幼稚園は設置済みと未設置に別れるんですよね。でも、払うお金は一緒。不公平ですね。
- 「昔はエアコンがなくても大丈夫だったのは今より気温が低かったから」は本当か 日本気象協会に聞いた
(東京ではこの100年間の間に年間での平均気温が3.2度上がっています。特に上がっているのが最低気温の4.4度。最高気温は1.7度上がっています。) - 昨日、子供に聞きましたが、休み時間は外では遊ばないようにと学校から言われたみたいです。後、授業もコンピューター室やホールなどのクーラー設置された部屋で学年、クラス順番で使ったみたいです。学校側も色々対処してくれているけれど、赤穂市側が全く、動いてくれない。コメントくらい発表したらどうなんですか。学校の先生達も可哀想です。
参考:赤穂民報のエアコン・ストーブ問題の記事等
- 【読者の声】ストーブのない中学校の改善を
- 【読者の声】教室に冷暖房は不要
- 【読者の声】勉学に専念しやすい環境を
- 【読者の声】熱中症予防に部活動の「中止基準」を
- 「35度以上は部活動中止」市教委が目安
- 神戸新聞:全教室にエアコン14市のみ 必要性認識も予算の壁 兵庫の小中学校
ここでは教室のエアコン問題に関する情報をまとめていきます。
なぜ子どもは熱中症になりやすいのか?
まず大前提として大人より子どもが熱中症及び脱水症になりやすいのかを知っておく必要があります。以下は子どもが脱水症になりやすい5つの理由です。
①体液量、とくに細胞外液が多い
新生児期から小児期は体重に占める体液の割合が70~80%に達します。体液は細胞内液と細胞外液にわけられますが、小児は細胞外液が多いという特徴があります。通常、体液の喪失は細胞外液から始まるため、小児は脱水症になりやすいのです。
②体重あたりの不感蒸泄が多い
発汗以外に呼気や皮膚などから知らないうちに失われる水分を不感蒸泄と呼びます。不感蒸泄は、大人では体重1kgあたり15ml程度ですが、新生児や乳児では体重1kgあたり15~25ml程度にもなります。失われる水分が多いので、それに見合う水分を補わないと脱水症にかかりやすくなります。
③腎臓の機能の発達が十分ではない
子どもの腎臓の機能はまだ十分に発達していません。体液の喪失を防ぐためには、腎臓で水分や電解質を再吸収する必要がありますが、腎機能が未発達だと水分や電解質が失われて脱水症に陥りやすくなります。
④自分の意志で水分補給できない
新生児や乳児は、喉が渇いても自らの意志で水分や電解質の補給を行うことが難しく、脱水症に対する予備能力も低いため、保護者が気づくのが遅れると容易に脱水症になります。
⑤水分の出入り比率が大きい
小児は成人と比べて水分の出入りが大きいのが特徴。成人では1日に細胞外液の7分の1程度が入れ替わりますが、小児ではおよそ2分の1にも達します。そのため、食事量が減ったり、下痢や嘔吐を起こしたりすると脱水症になりやすいのです。
STOP熱中症より
さらに以下の理由もあります。
子どもや高齢者は、水分をためておく筋肉の量が少ないため熱中症になりやすい。服部さんは、最高気温に5度足して判断すべきだと指摘。背が低く路面に近い子どもは野外で照り返しをまともに受けるうえ、気温が35度でも体感温度は40度近いという。
文部科学省による教室等の温度基準は28℃以下
2018年4月より文部科学省は学校環境衛生基準の望ましい温度を「10度以上、30度以下」から「17℃以上、28℃以下」に見直しました。
CO2・温度と学習効率の関係、事例
とても面白いPDFを見つけたので共有させて頂きます。
社団法人文教施設協会による学校の学習環境を考える-室内環境と省エネルギー-(委員長 安岡 正人(東京理科大学教授・東京大学名誉教授))というものです。
10年前の資料ですが参考になる部分は大いにあるかと思います。
以下、概略です。
- 室温が上がれば上がるほど学習効率は落ちる
- 学習意欲は常に換気量が多い(CO2が少ない)環境で高くなるので人工換気システムも同時に導入すべき
- 各自治体の負担方法には次のような例が挙げられます。
①教育委員会が空調設備等の設置を行い、それに要する費用の一部を授業料として徴収している、また は、授業料とは別に空調使用料として徴収しているケース
②自治体が空調機器を設置するのではなく、保護者が主体となって機器を設置し、それに要する費用を 負担しているケース - その他、設備制御管理システムや照明システムなどについて
エアコンだけではなく、さらなる学習効率のための換気システム、空調・照明・各種設備の設備管理システム、維持費ダウンのための省エネルギー対策(植栽、屋上緑化、遮熱カーテン、複層ガラス)など同時に検討していく必要があると思います。
他にはPFI方式というものもあるようです。
「自治体で学校にエアコンを一斉導入するには、莫大(ばくだい)な財源が必要となり単年度予算では難しい。しかしPFI方式にすれば、民間資金で一斉導入ができる。自治体はその後、一定の期間をかけて費用を償還していけばいい。長岡京市の場合、契約期間中の機器の性能保証や、適正な使用法を学校に助言する業務を事業者に課しており、事業者は故障しないようにメンテナンスに気を使うため、結果的に省エネにもつながる。ただ、PFI方式だと事業者選定に数カ月はかかるので、早期導入がしにくい面もある」
〈教室のエアコン設置〉「生きる力育むには不要」山田宏氏 「教室での集中力アップ」松原斎樹氏
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